こちらは兵庫県立洲本高校 公式 同窓会ホームページです。

ご挨拶 学校長 越田 佳孝

 県立洲本高等学校の同窓会の皆様には、日頃から本校の教育活動にご理解と多大なるご支援を賜っておりますことに厚く御礼申し上げます。

 6月28日の本校同窓会総会で、「運命の本」との知的な出会いを設定する「洲本高校セレンディピティ(serendipity)作戦」、「一押し本100選」の取り組みを紹介し、推薦本のお願いをしました。今回は、「洲本高校一押し本100選~未来をつくる一冊~」の完成の報告とそれとの関連で「ものごとをより広くとらえ、より深く考えるため」の読書についての話です。

 今(12月3日)、私の手元に「洲本高校一押し本100選~未来をつくる一冊~」という小冊子の原稿があります。「一押し本100選」は、今年度、県教育委員会が高校生の読書量を増やすための「ひょうご読書活動充実事業」の一環として、図書委員会の生徒が、生徒はもちろん教職員、保護者、同窓会に呼びかけて推薦いただいた本を100冊に絞り込んだものです。最近本を読まなくなったと言われている中高生が、読書が好きになった「きっかけ」のほとんどが「たまたま読んだ本が面白くて」だといいます。そのたまたま読んだ本が、自分の一生を左右する本になるかも知れません。それを「セレンディピティ(serendipity)」といいます。ふとした偶然から閃(ひらめ)きを得て、成功に至る「能力」のことです。

 今、世界と日本は、グローバル化や情報通信技術の進展、少子高齢化などにともなって変化が激しく、先行きが不透明なものになっています。こういう時代に求められる力とは、与えられた問題の解を、教えられた方法によって探し出す力では決してありません。与えられた問題の解を、自ら編み出した方法によって導き出す力でも不十分です。自ら新たに問題を設定し直して解を探っていく力、既存の社会や組織のシステムやフレーム、それ自体を変えていく力が求められます。そのために必要とされるのが「教養」です。「教養」とは英語で“liberal arts”といいます。“liberal”とは自由という意味で、誰かの指示でもなく自分で判断して行動できる人間としての「自立」をいい、“liberal arts”とは、そういう自立した人間に必要な知識・技術のことです。その「教養」の一つが「思考・学びの教養」です。今、学んでいることが、その学問体系の中でどこに位置するのかを理解することです。

 自分が、今、どういう「立ち位置」にいるのかを知るためには、自分と考え方や価値観を異にする人と交わることが必要です。キーワードは「多様性」です。しかし、実際には、自分と考え方や価値観を異にする人とそうそう交流できるものではありません。自分が直接経験することには限りがあるからです。それを補ってくれるのが「本を読む」ということです。哲学者のショーペンハウエルは「読書とは、自分の頭ではなく、他人の頭でものごとを考えることだ」と言っています。本来は「自分自身の頭で考えよ」という警句なのですが、私は「こういう考え方もあるのか」「こういう論の展開もできるか」という発見につながると思っています。ものごとをより広くとらえ、より深く考えるためヒントになるのです。それが本を読むまでは、自分自身も予想もしなかった「未来」につながることがあります。その取り組みが「洲本高校一押し本100選」です。さあ「未来をつくる一冊」に出会いましょう。今後とも一層のご支援・ご協力をお願いいたします。